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第15話 その笑顔が怖いんですよ

last update Dernière mise à jour: 2025-06-19 12:05:12

 アスティに引っ張られながら、庭を移動していき、屋敷の中へと戻ってきた僕達。

 父さんたちのいる場所はだいたいわかるので、中に入ったところでアスティに声を掛け、近くにいたメイドに話しかけて、お父さんたちの所へ行きたいことを、先に報告してもらうために行ってもらった。

 興奮してしまっていたアスティはそこまで考えが回っていなかったようで、僕に止められた時は不満そうな顔をしていたけど、どこに伯爵様がいるのかまでは頭に無かったらしく、顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

「お伝えしてきました。今すぐでも大丈夫だそうです」

「そっか。ありがとう」

「いえいえ。旦那様方はサロンにいらっしゃいました。今から行かれますか?」

「うん。案内してもらっていいかな?」

「もちろんです。では参りましょう」

 僕は頷いてから、未だ恥ずかしがっているアスティの手をスッと握る。

「行こうアスティ」

「は、はい!!」

 途端にニコッと笑顔を見せて、僕の隣にトコトコと歩いてきて、すぐ横に並び歩き始めた。

――うん。アスティはかわいいなぁ。

 横を歩くアスティを見ながらそんな事を思う。

コンコンコン

「旦那様、ロイド様とアスティ様をお連れいたしました」

「うむ。入れ!!」

 メイドに開けてもらったドアの先へと進んでいくと、予想通りというか、父さんと伯爵様夫婦が食後のお酒などを嗜みながら談笑している様子だった。

「失礼します」

「失礼いたします」

 先に声を掛けて二人並んで部屋の中へと入っていく。

「ほほぉ?」

「あらあら?」

「な!

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